▶126.「秘密の場所」
125.「ラララ」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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フランタ国の知り合いたちに帰国の挨拶を終えた人形とナナホシは、博士が生きていた頃の家が建っていた場所へ向かっていた。
「博士ト✕✕✕ノ家、モウスグ?」
「ああ。家自体は解体したから、もうないが」
何十年も旅をして回っていたため、ナナホシのナビゲーションシステムも使わずに、人形が積み重ねてきたデータだけで進むことができている。
さらに道すがら薬草の採取や配達をこなし、食費のかからない一行は順調に財布を太らせることができた。
「ソレデモ、タノシミ」
◇
たどり着いたのは、人里離れた森の奥。
そこは周りより草が多く、木も若いものだけ。その群集は、心なしか円を描いているように見える。それは、その場所が以前に整地されたことを示していた。
「ココニ、家ガアッタノ?」
「そうだ」
「ウン…?」
ナナホシは疑問を呈するように触覚を傾げている。
「元々博士には、自分の死後は家ごと処分するよう頼まれていた。大部分は、ここに建っていた家のように不可逆的な方法で処分したのだが、一部は梱包して埋没処分したのだ。その場所は、ここから行く道しか記憶していない。こっちだ」
いつか博士と人形が歩いた道。
目の前にあるものが、求めていたものと違ったとき、
人間は必ずといっていいほど、落胆の表情を見せる。
(博士が求めていたものは何だったのだろうか)
博士ですら、ユズと呼んだ木が、そうではないと分かった時、
表情が変わった。すぐに戻ったが。
(あの人は、巧みに表情を隠すから)
いや、今思えば、表情を出すことに抵抗を感じていたような。
感情がないわけじゃない。生来は感情表現が豊かだったのだろうか。
過去に、何があったのだろうか。
(分からない、何もかも)
他人からパターンは収集できても、
それを使って定義づけをするには何もかもが足りない。
知りたいのなら、もっと集める必要がある。
そのためには。
人形は深く沈みそうになる思考を振り切り、目的地を指し示した。
「ここだ。この木の根元に埋めてある」
誰にも見つかることなく、博士と暮らした秘密の場所。
そこから持ち出した、博士にも伝えていない秘密の場所。
背負い袋からスコップを取り出して、土を掘り始める。
「処分シテモ取リ戻セル、ソレッテ本当ニ処分ナノ?」
「…博士に方法は任された。嘘はつけないが、言い訳程度はできる」
やがて、カツンと固いものに当たり、そこを中心として土を退けていく。
取り出した箱を開けると、中には厳重に梱包された冊子が出てきた。
「ソレハ?」
「私の最終設計図だ。これと施設の資料を照らし合わせながら、ナナホシの修復方法を探ってみようと考えている」
3/9/2025, 9:41:00 AM