Ryu

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星が溢れて、地球に落ちて、
僕らは逃げる。誰かが笑う。

今日の仕事は完璧で、上司がえらくご機嫌で、
お前の未来は明るいぞ、なんて、
勝手に俺の行く末を決める。

帰りの電車で妻からLINE。
二浪の息子が、志望大学に合格したと。
桜満開のスタンプを添えて、
あの子の未来は明るいわ、なんて。

今夜、星が溢れて、
美しいきらめきが揺れる。
未知に溢れた宇宙の何処かで、
誰かが仕掛けたシナリオ通りに。

夜の街に明かりが灯り、その明かりのひとつひとつに、
人々の暮らしが宿る。
夜の帳、犬の遠吠え、遠く走る電車の音。
息子の合格を祝って、ささやかな家族の宴。
すべてが終わることなど、つゆにも思わない。

「見て!お星様がキラキラしてる!」
「ホントだ。都内でもこんなにたくさん星が見られるんだな」
「ねえパパ、どうして空にあるお星様は落っこちてこないの?」
「星が…?まあ、たまに星の欠片は落っこちてくるけど…あんなのが落ちてきたら、地球は大変なことになるよ」
「だって星には引力があるって、テレビで言ってたよ」
「引っ張り合う力だね。星同士の仲が悪いと、引っ張り合わないんじゃないの?」
「そーなんだ。仲良くして欲しいな」

明日は娘の小学校の入学式。
成長してゆく娘は、お星様のようにキラキラとした未来を心に描いてる。
引力で引き合うように、友達がたくさん出来るといいな。
彼女が大人になる頃には、この世界はどんな場所になってるんだろう。

星が溢れるような夜空に、人々は明日の幸せを願う。
願いが叶うのならば、ずっとずっと家族の笑顔が見られますように。
いつまでも、夜空の星達が輝き続けますように。

星が溢れて、地球に落ちて、
僕らは見上げる。美しい尾を引く流れ星を。
星に願いを、何億光年の彼方から、
我らが地球を訪れた、美しいあの隕石の名前は、ベンヌ。
儚く消えてゆくのは…星の欠片か命の灯火か。

3/16/2024, 4:54:35 AM