『さよならは言わないで』
さよならは言わないで欲しかった。
まだ、出会って間もないというのに。
アタシはガックリとうつむいていた。
ランチタイムの公園の地面は、昨日の大雨で、すっかりぬかるんでいる。
「いやぁ、……それはもう無理でしょ」
公園のベンチに並んで座る友人が、気の毒そうにアタシに言う。
「残念だけどさ……仕方ないよ。それはバイバイしよう」
友人の言葉に、アタシがキュッと唇を噛んだ。
と、その時。
未練がましく、アタシのお腹がぐうぅっと鳴った。
友人は「ほら、私のを半分あげるから」と、それを差し出した。
「熱いから気をつけなよ。もう落とさないようにね」
小さくお礼を言うアタシの足元には、水たまりに浸かった大きな肉まんがプカリと浮いていた。
12/3/2023, 12:01:52 PM