下層街区の大人に、コーザ一家(というか、主にコーザ)を除いて、追放できるならば、という希望を集計したなら、九割九分九厘、ロールズとロイズの姉弟の名が挙がるだろう。
彼等は頭の螺子と箍の無いコーザと異なり、決して狂人では無い。むしろ善性が強い。
頭の螺子が箍が猫の髭でできているだけなのだ。
彼等は生活用水を引く水路に住み着いた鼠の群れを駆除するため、特定が難しいことを理由に地上三区画を崩落させる。
「ロイズ!そっち行ったよ!」
「分かったわ!」
次の瞬間、爆発音と崩落音が響き渡る。
偶然にも該当区に人はおらず、死傷者は出なかった。
鼠の生死は不明だ。
彼等は贈賄をした前街区長と前街区副長、並びに商会長など要人を丁寧かつ厳重に梱包し、大型蟲撃退用砲台を占拠し、射角を更生施設の峨眉山に合わせ、直接送り込む。
「大丈夫よ!死にはしないわ!たぶん」
「ロイズ!点火するからそこどいて!」
次の瞬間、爆音と共に弾が打ち出され、
ひどく情けない悲鳴が遠ざかっていく。
珍しく一日だけ賞賛されたが、しばらくの間区民の生活に大きな混乱を招いた。
彼等は蔓草の侵食激しく住居に住めず困っていた区民の話を耳にし、以前着火により大火事になった失敗から、街外から中型の蟷螂を密輸入し、その鎌を上手く誘導し、人力では到底取り切れない蔓草(と、住居)を瞬時に真っ二つにする。
「あ」
「やり過ぎたわ!」
すぐに討伐し、街外に埋めたが、他の蟷螂がその匂いを辿ってきたのか、上層部に襲撃があったと後日噂が流れてきた。
彼等はある夜、コーザ一家が中層部に密輸しようとした商品を根こそぎ奪い、丁寧に梱包し、街区の孤児院と点在する孤児集落にばらまいた。
「ロイズ」
「なあに?ロールズ」
「これって子供たちの特別になるかな」
「とーぜんでしょ!」
当然コーザ一家の恨みを買うことになったが、いつもの事なので全く意に介さない。
もし下層街区の子供に、将来なりたい人物を集計したなら、九割九分九厘、ロールズとロイズの姉弟の名が挙がるだろう。
彼等は子供たちの憧れなのだ。
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昨日のテーマの特別な夜です。
今日のテーマは別に書きます。
1/22/2024, 3:03:23 PM