カムパネルラ

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気だるい朝の空気を吸い込んだ。
寒空の下をとぼとぼと歩く人々の顔は、いかにも帰りたいと言うようで。
家を出たばかりだろうに気が沈んでいる。
かくいう私もその民衆と大差ないのだが。

制服のスカートから覗く足は寒さに震え、吐く息はたちまち白く変わって空気に溶け込んでいく。
‐1℃の気温の中、学校へ行こうと家を出ただけでも偉いのに、そんな私を褒めているのか追い詰めているのか、純白の雪が降り注ぐ。
世界を美しい白銀に染めていく。

雪を見るとはしゃいでしまうのはいくつになっても変わらず、幾分か気持ちも晴れて足取りが軽くなった。
道端の草には霜が降りて、これまた清廉とした輝きをまとっている。
通り過ぎる車の音は荒々しくも軽快で、時折髪を揺らす風もここまで来るといっそ心地よいように感じられた。

そうは言ってもやはり、寒冷の空気はつんざく悲鳴のように私を貫く。
視界の端にひっそりと咲く一輪の花にでもなったかと錯覚してしまうほどの心細さである。
学校へ行っても友達なんていないのに。
授業なんてわかるはずもないのに。
非難されているようで息を震わせた。

学校はもう目の前に迫っている。
朝早くから登校する生徒たちの様子も視界に入った。
雪の上にいくつもの足跡を残しながら、私は今日も真冬の寂しさに身を包むのだった。


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『寂しさ』

12/19/2024, 10:37:08 AM