「無人島に行くなら、あなたは何を持って行きますか」
スーパーボールの様に弾けた声が、辺りに響く。
△△が本を読む目を上に向けると、そこには××が居た。
放課後の誰も居ない教室。
黄昏の光が、教室にいる二人を照らしている。
オレンジ色の髪をさくらんぼの様にまとめた××と、栗色の髪をねぼすけの様に散らした△△。
2人っきりの教室、何も起こらないわけがなく…
この言葉に続くようなことは、起きなかった。
「聞いてるの?無人島に!行くなら!」
「聞いてるよ、うるさいなぁ。えー無人島?」
「そうそう!因みに私は災害用リュック」
「思ってたより現実的な物だった。うーん、そうだな」
△△がその答えを言おうとし、天井を軽く見つめる。
「それだったら、僕は…」
答えを伝えようと、視線を元に戻し、話しかける。
いや、話しかけられなかった。
何故ならば彼女の姿は目の前になく、辺りは教室ではなく、海と砂浜だったからだ。
「は?」
その声は、そばにある水の音にかき消され、虫の鳴き声に蝕まれる。
蒸し暑い風が制服を揺らし、ギラギラと照りつける日差しが喉にスリップダメージを与える。
2人っきりの教室、何も起こらないわけがなく…
本当に、"何か"が起きてしまった。
お題『無人島に行くならば』×『俯仰之間』
10/24/2025, 9:37:50 AM