無音

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【50,お題:空が泣く】

そこは1人の少年の気分だけで、天気が変わる世界

彼が笑えば空は晴れ、彼が泣けば空も泣く

そんな世界で、少年は1人膝を抱えて泣いていた


泣くな...泣くな...泣くな...

みんながそれを望むから

笑わなきゃ...笑わなきゃ...笑わなきゃ...

晴れなきゃ布団も干せやしない、洗濯物も乾かない

笑え...笑え...笑え...笑え...笑え...


必死に暗示をかけながら、両手で自分の頬を引っ張る
足元の水溜まりに写った少年の顔は、まだ泣いていた

ザアアアアアアアアッッッッッッッ

雨は勢いを増す
こんな山奥に人がいるはずないのに、見られている気がする
「こんなこともできないのか」責められてる気がする

「っ、ごめんなさいごめんなさいッ...ちゃんとやるから...」

その時、ふっと雨が和らいだ
変わらず降っているがさっきまでの叩き付けるような豪雨じゃない

優しい優しい包み込むような、小降りの雨
まるで、笑わなきゃいけない自分の変わりに泣いてくれるような

ブワァと風が吹く、森が揺れ木の葉が舞った
ビュウウ、ビュウウとまるで「元気だして」と歌うように

その風に押されて、雲が揺れる
曇天を押し退けて、光が覗いた

「...!わぁ...」

丘から見渡す町の景色、曇っているのに晴れていて晴れているのに泣いている
不思議な不思議な景色

キラキラ光りながら、舞い降りてくる雨粒達は
シャボン玉のように七色に色を変えた

「あ、虹だ...」

ふと、雲と太陽の間に七色の尾びれが覗く

ぽかぽかと、心地いい気温の中
うとうと微睡みながら、少年は空を見た

いつか見た、大好きな空の景色

この空が見れるのなら
このお役目も、悪いものじゃないのかな

ぼんやりとそう思い、少年は瞳を閉じた。

9/16/2023, 11:16:29 AM