『約束』
小さな頃から、言葉に色がついていた。
書かれた言葉にも、口から出る言葉にも。
文字そのものには色はない。
組み合わされ、意味を持って初めて色づくのだ。
本を読むときには苦労する。
紙面が色とりどりで、目がちかちかするから。
人と話をする時は、相手の口からさまざまな色が零れ落ちる。
そんなカラフルな世界にあって、ひとつだけ「約束」という言葉には色がない。というか、真っ白に見えるのだ。
前後の言葉には色があるのに、「約束」だけは白い。ほうっと吐き出された吐息のように。
似たような色合いの言葉に「誓い」や「祈り」がある。前者は僅かに金色を帯びた白、後者は青みを帯びた銀に近い白。
もしかしたら、人の根っこのところにあるのは、この世界との「約束」なのかもしれない。
3/5/2025, 8:50:48 AM