「では、今期の女子の学級委員は〇〇さんにお願いしたいと思います」
ああ、やはり。成績も運動も愛嬌もいい、非の打ち所なんてこれっぽっちもないあの子に満場一致で決まった。
「男子は?誰か立候補いませんか?」
手が挙がる気配はない。眩しい太陽には近づき過ぎるとあっという間に蒸発してしまう。隣に並ぶ度胸がある男子などこの狭い教室にはいない。
「先生!私が指名してもいいですか?」
彼女の声はよく通る。
教室がざわつく。彼女が指名するパートナーは一体誰なのだろうか、と。彼女に選ばれる男子は誰か。ひょっとして自分が選ばれるのではないか。男子の淡い期待が目に見えるようだ。
「ねぇ、一緒にやろうよ!□□さん!」
彼女の真っ直ぐな眼に私は射抜かれ、クラスメイトの視線が一斉に突き刺さる。
「え、わ、わたし……?」
いやいや、おかしいだろ。男子の学級委員を選ぶのではなかったか。生まれてこのかた、女子として生きてきたし、男子になりたいとも思ったことはない。
「先生!男子女子を限定するなんて現代に合っていないと思います!というわけで我がクラスの学級代表は女子2名です!」
いや、まだ学級委員を引き受けるなんて一言も言っていない。断じて言っていない。神に誓って言っていない。なるほど……と頷くんじゃない、担任。仕事をしろ担任。生徒にクラスを乗っ取られていいのか。
「学校生活の最後になにか2人で思い出つくりたいな!とっておきのやつ」
昨日言っていたことはこのことか。物心付く前から彼女の傍にいたはずなのに、これは予測できなかった。私は小さく溜息をついた。彼女の望みはいつだって、彼女にとって最高の形で叶えられる。
「わかりました。」
私の平穏な学校生活は終わりを告げた。
/「最初から決まってた」
8/7/2023, 3:33:46 PM