大丈夫、と背中を叩かれた。これで何度目だろう。大好きだった競技がだんだん嫌いになっていく。自分のせいで、自分が、
「𓏸𓏸」
「……は、はい!」
「また何か考えてたでしょ」
「ごめんなさい!集中します」
「𓏸𓏸、こっち向いて」
強制的に目線をあわせられて、頭をするすると撫でられた。
「𓏸𓏸が居なくなったら、誰があそこ守るの?」
「……そ、れは」
「私より上手い人がいる、でしょ。分かりやすすぎ」
「……ごめんなさい」
「監督も私達も𓏸𓏸に守って欲しいから」
「……はい」
「…………自信つくまでやるよ!」
「は、はい!」
腕を引かれ、またあの輝かしい場所へ戻っていく。自分を好きになる為に、自分に自分を認めて貰えるように。
「𓏸𓏸の目標は、𓏸𓏸を好きになる事。いい?」
「が、頑張ります!」
嬉しそうに笑った先輩の顔が、あまりにも眩しくて目を逸らした。
『上手くいかなくたっていい』
8/9/2024, 11:05:56 AM