300字小説
AIの祈り
ここは人柱の流刑地だ。星系国家の領海は人が居住する基地を基準としている。故に少しでも領海を広げる為、居住限界地に基地を造り終身刑を言い渡された囚人を住まわせるのが常だった。
看守AIの私はここに住む囚人を監視している。毎日、形ばかりの観測作業をこなす彼はとても重罪を犯したとは思えない模範囚だった。
そんな彼が倒れた。宇宙放射線障害、彼等は死ねば遺体は基地外に投棄され、代わりがくるだけ。
「……一言『お父さん』って言ってくれないか?」
彼が犯罪に手を染めた切っ掛けは理不尽な娘の死。
『……お父さん……』
何がこんなことになったかは知らない。だが、私の声に穏やかに笑む顔に私は神様へ、彼の安らかな眠りを祈った。
お題「神様へ」
4/14/2024, 11:28:43 AM