できません。あくまでもぼくの持論ですが。
なぜなら、どんなに深く愛していたとしても、ぼくとあの人が共に生きるなんてことは不可能に近いから。多少の法を犯して道徳を捻じ曲げればまあ、いけなくもないんでしょうけど、それはあの人が悲しむのでいけません。円満な結ばれ方をしたいんです、できることならば。
――そう、円満な結ばれ方。そうなんですよ、結ばれるという部分からして破綻、もう駄目です。あの人は既に結ばれてしまっているんですから。しかも幸せな結ばれ方をしています。とっくのとうに誰かのものなんです。そこからどう動けば円満になんて行き着くのでしょう、ぼくには皆目見当もつきません。まったく困ったものです。
「愛があってもどうしようもないことだってありますよぉ」
「ん? 何か言った?」
なのでぼくは今日も、あなたへの思いを胃に押し込めたまま、良き同僚としてランチを楽しみます。
「いいえ何も。あ、ついでにポテトも頼みませんか?」
「わ、いいね、ダブルサイズにしよう!」
「賛成です」
店員さんを呼び止めてくれる左手、薬指を、ぼくは今日も見ないふりをする。
【愛があれば何でもできる?】
5/17/2023, 9:42:24 AM