浮遊レイ

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 ねぇ、もしもの話なんだけどね、タイムマシンがあったら未来か過去、どっちに行きたい?


 青白い華やかな笑顔が僕に向けて笑いかける。
「私はねー、22年後の未来に行きたいなー!」
 夢を語るように目をキラキラとさせる彼女に僕は「何で22年後なの?」と当たり前な質問をした。
「んーそれはね、その年になると彗星が見れるんだ!だから、その日に飛んで、見晴らしの良い所で彗星を見たい。もちろん君と一緒にだよ!」
 病院の天井に、たくさんの管で繋がられた腕を伸ばし、物を掴むようなジェシュチャーをして、子供に話しかけるような明るい口調でに僕に話す。
 別にタイムマシンがなくても、22年後、一緒に見に行けばいいだろ。
 そんな短い言葉は僕の口から出なかった。
 変わりに、彼女の細い手を握りながら、「そうだね」と言うことしかできなかった。
 彼女の手のひらに一粒、二粒と雫が垂れる。
「何で泣いてるのよー。…それよりさ、君はどうなの?過去か未来どっちに行きたいの?」
 彼女は僕の崩れた顔を見て、呆れ笑いを浮かべると、空いている片方の手で僕の頭を撫でた。
 温かいけど弱々しい手であった。
 この時、僕は彼女の問いには答えれなかったけど、これだけははっきりしてる。
  僕は初めて君と出会った日に戻りたいな。そして、何度も何度も君と一緒にいる時間を繰り返したい。
 けど、そんな状況を君が見たらきっと、いやな顔をするだろうね。
 でも僕はね、君がいない未来なんてね、これっぽっちも歩きたくないんだ。


 だから僕は君と初めて出会った、7年前の過去に行きたい。
そう言おうとしたところで、僕は言葉を飲み込んだ。かわりに、
「秘密ー!」
と彼女に笑いかけた。実に不細工な顔をしていたと思う。
「何それー。」
 そう不服そうに言うと、彼女は寂しそうに笑った。
 
  

題名 繰り返しの日々を願う

7/22/2024, 1:47:16 PM