谷折ジュゴン

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創作「最初から決まってた」

「よくここまで生き抜いたね」

太陽の光が届かぬ地下深く。魑魅魍魎を統べる魔の女王は玉座に身を委ね、一人だけ生き残った勇者を見下ろしていた。そして、艶やかな赤の唇を開く。

「貴方は確かに神に選ばれし勇者だよ。だけどね、それでもどうにもならないこともあるの」

魔の女王は手招きするような動きをした。すると、目には見えない斬撃が勇者を襲う。四方八方から受ける不規則な攻撃に困惑する勇者を、魔の女王は鼻で笑った。

「この迷宮に入って来た時点で貴方は終わる。理解するもしないも、貴方のそれは蛮勇だったの」

攻撃をさばききった勇者は魔の女王を見据え再度、剣を構えた。が、すでに勝負はついていた。勇者の胴体を一本の剣が貫いている。

「もう終わりにしよう、貴方もご苦労様。少しは楽しめたわ」

剣が引き抜かれ、勇者は膝から崩れ落ちた。虫の息になった勇者が何か呟く。その言葉に魔の女王は穏やかに笑った。

「答えは単純。結末は最初から決まってた。そして、我の味方が多かった、ただそれだけよ」

狩りの終わりを知らせる鐘の音が鳴った。迷宮のあちこちから集まって来た彼女の配下たちが、今夜はご馳走だと騒ぎながら勇者たちの骸を運んで行く。その様子を眺めながら魔の女王は、次なる獲物への策略を巡らせるのだった。
(終)

8/7/2024, 12:20:33 PM