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「正直者もたまには嘘吐きたいじゃん? 真面目な人もたまには休みたいし、赤色が好きな人もたまには他の色の服を着てみたくなる」
「人は基本的に慣れているものを好むんだ。“美味しかったから”って同じメニューを注文し続ける人は、明日には“毎日頼んでるから”が理由になっているかもしれない。もしかしたら“今更他のものに手出せないから”かもね」
「そんな人間が変化に興じる理由って何だと思う?」
私は黙った。何故ならここは遊園地だからだ。いや違う正確には、ここが遊園地なのにこんな哲学的かつ抽象的な机上論に舌を回すこの女にドン引きしているからだ。
初対面のときから思っていたが太陽が東から昇るのと同じくらい当然に明確に、彼女の頭はイカれている。世界の真理を確認したところで、聞き手は大変に退屈だろうが。
「えー、無視するの? じゃあ君がいつも乗らないジェットコースターに今日も乗らなかった理由は?」
「……嫌いだから」
「それはジェットコースターに乗らない理由でしょ? 私が聞いてるのは今日“も”ジェットコースターに乗らなかった理由だよ」
いつも乗っていないからと言わせたいらしい。彼女の思い通りになるのが癪なので黙った。
「……遊園地は変化の集合体だよ。ここにいる95%の人は、日常の形を変えてまでここに来るっていう変化に興じている」
「つまり?」
彼女の話が始まってからずっと、私は結論を聞いてチュロスを買いに行く意向だ。
「変化は楽しいから好まれる」
結論にしてはあまりに弱い(主に頭が)短文に、立ち上がろうか迷った。
【たまには】2024/03/05
たまにはらくしたいよね

3/5/2024, 2:23:34 PM