霧つゆ

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 学校で出された宿題が「自分の名前の由来」だった。参観日の日に発表するらしい。
 私は、家に帰って、お母さんとお父さんの帰りを待った。今日こそは起きて2人をお出迎えしよう。そして、名前の由来を聞こう。と張り切った。
 しかし、お母さんもお父さんもいつまで経っても帰ってこなかった。だから、いつものように冷たいご飯(レンジは危ないから使っちゃだめって言われてる)を食べて、お水(お湯は危ないから使っちゃだめって言われてる。)で体を洗った。

 短い針が12を指した頃、私はウトウトしだして、眠たい目をこすった。起きていたいのに、体は眠たくてしょうがない。私は、由来を書く紙を握りしめて、そのまま床で眠ってしまった。
 次の日、目が覚めるとお母さんとお父さんは仕事に行く準備をしていた。

「目が覚めたのね。早くご飯食べて学校行きなさい。」

 そう言って、お母さんは会社へ行った。お父さんも軽く眼鏡をかけなおして会社へ向かっていった。
 頭がぼぅとしていたが、名前の由来を聞くことを忘れていたのを思い出して、はっと目が覚めた。

「あ、私の名前…。」

 紙を探すと、文字が書かれていることに気がついた。私が眠っている間に書いてくれてたんだ。そう思って嬉しくなった。紙を大切にランドセルへ入れて、私はスキップ混じりの足で学校へと向かった。

 参観日の日は、沢山のお父さんお母さんが集まっていた。私のお母さんとお父さんはお仕事で来れないけれど、私は慣れっこだから気にしなかった。
 家庭科の時間になって、前に出された宿題の「名前の由来」を発表することになった。
 皆が発表していき、ついに私の番になった。

「私の名前は、愛宝です。お母さんとお父さんから愛されて生まれてきて、宝のように大切にされるという意味です!」

 そう、元気よく言った私の発表をたくさんの人が拍手してくれた。でも、ある男の子が言った。


「でも、お前の親、今日来てないじゃん。」

No.24 _私の名前_

7/20/2024, 1:29:14 PM