れいおう

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今日は久しぶりに夜中に目が覚めた。学園祭やスピーチコンテストの時以来だ。時間は1時17分。いつもなら寝ている時間だ。なんでこんな早くに起きてしまったのか考えてみるとよく分かる。きっと明日…いや今日が大学入試の一次試験の試験日一日目だからだ。今日と明日の試験結果によって第一志望の大学に入れるか決まってくる。そんな大事な日なんだから当然緊張してしっかりと眠れるはずもない。さすがにこの時間から起きているのはこのあとの試験に響くと思い、もう一度布団に入り寝ようとした。しかし、まったく眠ることができない。眠ろうと思えば思うほどに眠ることができなくなる。
「あ、やばい、きっとこのままじゃ寝不足で試験に臨むことになる。最悪だ」と布団にくるまり少し焦りを感じていると、ブーブーとスマホが振動した。アラームはさすがにこんな早い時間にかけていないはずだけどなんだろうと気になり、どうせなら見てみるかと布団から出てスマホを取り、通知を見ると中学時代からずっとの親友からラインが来ていた。
【なあ、今日の試験って制服だっけ、私服だっけ?】
とどうでもいいというか昨日先生から説明のあった内容についての質問が来ていた。見てしまったものは返そうと
【今日は制服で行けって担任言ってたぞ】 
と返信する。すると、
【早っ!なんでこんな時間に起きてんの?いつも寝てるじゃん】
とお互い様だろと思うような返信が返ってきた。全く眠れそうにもないのでちょっと付き合ってやろうと返信をする。
【なんか緊張して眠れなくて。】
と送った。すると、電話の発信音が聞こえ、画面が切り替わった。どうやらその親友が断りなく電話を掛けてきたようだった。電話に出ると開口一番、
「お前国立志望だもんな。しかも東京の大学。今日テストあるもんな」
と言ってきた。そう言えばこの親友は地元の私立大学志望だから今日の試験は受けないのかと思い出す。
「そうだな。今日で行けるかどうか決まっちゃうかも知れない」
一応このテストの配点は圧縮されるので最悪な結果でも、ある程度は戦える。だけれどもその時点で他の受験生とは大きな差がついてしまう。
「そりゃ緊張もするよな。だけどお前なら大丈夫だよ。」
その親友は気楽な感じでそう言ってきた。その態度に少しイラッとしてしまい、
「なんでそんなことが言えるんだよ」
少し精神が不安定な状態になってしまっていた俺はなぜか強い口調でそんなことを言ってしまった。すると、
「俺はお前が必死に勉強してるの見てきたから分かる。」
と親友が言った。そして続けて、
「努力は裏切らないって何より言ってたのはお前だろ?お前は努力してきた。それが何よりの証拠だよ。だから大丈夫。」
その言葉は中学高校と一緒に過ごしたその親友の言葉だからこそ俺の心に強く響いた。そうだ俺ならきっと大丈夫。俺は一言、
「ありがとな。お陰で気が楽になったよ。おやすみ」  
と言った。
「ああ、おやすみ」
という返事を聞きそのまま電話を切った。電話を切ると、またスマホの画面はラインの画面に戻り、俺の返信が一番下に表示されていたままになっている。ブーブーとまた振動すると、その下に新しく、
【ファイト一発!】
とその親友からの返信がきた。一発で試験が終わるわけじゃないんだけどなと考えながら布団に入ると、先程までの眠れなかった感覚はどこかに行き、不思議と安心感が湧き出てきた。それに加えて緊張はなくなり、なんとかなるさと少し楽観的な考えさえ湧いてきた。そこまで長い時間ではなかったが、この夜は俺が大学生になったときにも、大人になっても思い出す。そう確信するほどにこの夜は俺にとって最悪な夜から、特別な夜になった。そう思うくらいあいつの言葉は力を秘めていた。時間は1時58分。俺はアラームがオンになっていることを確認し、目を閉じる。明日の試験に挑むため。親友の言葉を胸に秘めて。

1/21/2024, 7:50:15 PM