#86 ジャングルジム
鳥かごに入ったら、こんな気分かな。
ジャングルジムの中ほどに留まって、空を見上げる。
四角に区切られた狭い空は、
飛んだら気持ち良さそうな青、ではなく。
今にも雨が降り出しそうな灰色。
周りで遊んでいた子たちは、とっくに雨を避けて去っていて、公園を独り占めだ。
私は、雨が降るときを待っていた。
そこに。
じゃり、じゃりっ
砂利を踏む音がだんだん近づいてきた。
誰が来たかなんて、顔を見なくても分かる。
「雨、降るよ」
「知ってる、待ってるんだもん」
「だから帰らないんでしょ、知ってる」
「よく分かってるね」
「だって好きだから。一緒に待ってていい?」
「私も好き。中に入る?」
「てっぺんに窓を付けてもいいのなら」
「お願いしていい?」
「わかった」
彼女は傘を持ったまま、するすると中に入ってきた。
一応危険防止のため、上に登る前に一旦傘を受け取る。そして最後のワンタッチだけで開く状態にして差し出す。
無言で行われるやり取り。
先の会話だって、
双子の私達にとっては一種の様式美だ。
分かりきっている答えだって、
口に出すのが必要な時もある。
透明なビニール傘をジャングルジムのてっぺん、
私達の真上に被せて、窓にする。
一連の作業を終えた彼女はいつも通り、私と向かい合わせに座った。
じっと二人で見上げる空。
四角の枠を更に8本の骨で区切られた空は、より鳥かごらしくなった。
なかなか、悪くない。
9/23/2023, 12:18:31 PM