高台から眺めると、大嫌いなこの町も少しましに見えた。
下から掬い上げるように吹く風。
空を見上げて息を吸い、雲の流れに身を委ねる。
目を瞑り自分自身が空に染まっていく想像をする。
穏やかに冷たい風が顔を撫でる。
とても気持ちが良い。
肩が持ち上げられ、踵が浮く。
両手を広げ、空に吸い込まれていく。
安堵と解放、そして墜落してゆく心地よさを感じた…
その刹那、とてつもない力で後ろに引っ張られた。
薄水色の空と雲をバックに、眉を斜めにした君が見ていた。
頬を伝う涙が、ひどく冷たかった。
題:落下
6/18/2024, 7:02:24 PM