陽月 火鎌

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【秋に恋をした】

昔、ある秋の三連休に行き先を決めずに旅をした。
各駅停車の電車を乗り継いで、乗り継いで。気付くと、山間部を走る路線に乗っていた。

そんな電車に乗っていた時、いつの間にか眠っており、目が醒めると私が乗っている号車には、私一人が乗客として乗っているだけだった。
寝過ぎたと思い、窓の外を見る。

色とりどりに染められた山々。
山と山の間に沈む夕日。

⸺私は初めて、“恋”をした。夕暮れの秋の景色に、恋を。

その後、あの景色をもう一度見たくて、同じ路線に乗った。だけど二度と、あの景色に出会うことは無かった。
もしかしたらあの景色は、神様の仕業だったのかもしれないと、今はそう思ってる。

9/21/2024, 11:19:43 AM