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 砂時計があると、何度もひっくり返して砂が落ちるのを眺めたくなる。細いガラスのくびれを、するすると通り抜けていく。途中でひっかかったりしないのかななんて思うけれど、そんなこともなく順調にすすむ。
 たまに落ち終えた後に、ほんの小さな粒たちが、ガラスのまるい底にかすかに残っていることがある。砂時計の上を軽くトンとたたくと、はっと落ちていく。

 砂が落ちる時は、微かな乾いた音がしている。ふと砂を手にすくって上から落とした時のことを思い出す。砂時計の砂は、砂漠に近い気がする。触ったことはないけれど、きっとサラサラで粒子が細かいに違いない。それがすーっと心地よい音を立てて指の間を落ちていく…。そんなことを思いながらまたうっとりと眺めてしまう。

「砂時計の音」

10/18/2025, 8:06:21 AM