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【麦わら帽子】

「いやー、だってポニテしたかったんだもん」
「だからって麦わら帽子に穴開けるやつがおるかいな」

誤魔化すようにえへへ、と〇〇が頭を掻いた。
よりによって麦わら帽子に穴を開けたらしい。
そうだ、あの切ったところから解れていきそうな麦わら帽子だ。
俺の呆れた顔とは反対に、〇〇は満足そうな表情をしている。
ポニテどころか髪を括ることもできない俺の短い髪では分かり得ないが、意外と快適なのかも知れない。

「別に〇〇が良いんならええけど」
「首元涼しくて超絶快適だよ。これ、売れます」

キリッとした表情で〇〇が言い、「何言うとんねん」と思わず笑いながらツッコミを入れてしまった。
つられたように〇〇も笑う。人から儚いと称される見た目とは結びつかない豪快な笑い方だ。
よく笑い方の表現で花が咲くような、とか花が綻ぶような、とか言うが、〇〇の笑い方は気温が30度超えるときの太陽が一番合っている気がする。
下手したら花たちを萎々にしている。
そんな失礼とも失礼じゃないとも言えることを考えていると、不意に〇〇が「笑い方、冬のときの月みたいだよね」と俺を見て言った。

「…それ、褒めてるやつ?」
「多分?」
「褒めてない可能性あるやつやん」

また笑い出した〇〇に、俺はため息をつくふりをした。

8/11/2023, 12:14:08 PM