まこここ子

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「はい、あーん」
「あーん………おいし」
「よね、愛情込めたけん」
「愛情の味はしないな、にんじんの味がする」
「せからしか、かわいい女の子とイチャイチャできる空気感やったやろ」
「え、なんて」
「うるせえって意味」
「そっちじゃなくて『かわいい女の子』のほうだな」
「バリかわいい女子が目の前におるん見えんのか?」
「見えない」
「はぁ~?ぶちくらすぞ」
「はいはいブチ殺すね、わかったから、クッキーもう一枚くれ」
「……あーんして」
「あーん」

「……ところで、最近アイツとはどうなったんだ?」
「あー……別れた」
「へえ、どうして?」
「そこ聞く? ……わたし、毎日昼ご飯おまえと食べとるやろ?」
「うん」
「それが気に入らんって言われて、ケンカなって、別れた」
「……それって」
「おまえが2週間前にあの子と別れた理由とおなじやね」
「うわー、最悪だ」
「互いに恋人運に恵まれんというか、恋人の器小さいというか」
「……これはさ、もうアレだよ」
「アレとは」
「俺たちは恋人を持つなってことだよ」
「……きっつ、クリぼっちきっつ」
「まあまあ、俺がいるじゃないか」
「クリスマスまでおまえと二人きりは嫌やけん意地でも彼氏作ってやる」
「フラれた」
「一緒にいたいならおまえが今食べとるアップルパイ一口よこせ」
「………はあ、あーん」
「あーん」

「……サークル、噂」
「そんな落ち込むなよ」
「はあ……大学生、食堂、同学年、異性」
「もう、もうなにも言うな」
「目撃情報拡散、警戒中、警報発令中!」
「人里にクマ現れたみたいになってるから!」
「なんや『恋の警報発令中』って!!あと九州にクマおらん!!」
「落ち着け!!!」
「せからしか!!!!」
「うるせえ!!!!!」
「……というわけやけん、しばらくは……」
「しばらくは……」
「この第二食堂でごはん食べることになるけん」
「まあそうよな」
「今まで食べてた第一食堂よりメニューが少ないこの第二食堂で食べることになるけん」
「きついな……俺のからあげ丼……」
「アップルパイはあるんで」
「アップルパイ好きなのはお前じゃないか」
「へ?」
「お前に一口やるために買ってたんだが」
「……………はぁ~??」
「……………え?」
「……自分がどれほど恥ずかしいこと言っとるんか分かっとらんのかおまえ~?!」
「………あ」
「その甲斐甲斐しさを元カノにも発揮できたらなぁ~? 『元』は付かんかったかもしれんのになぁ~?」
「うっせえ!!!」
「……じゃ、今日もアップルパイ一口よろしくですね」
「はあ……」

12/1/2024, 11:25:47 AM