川柳えむ

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 背中合わせで、手の中にある小さな平べったい箱だけ見てた。
 二人でいるはずなのに、部屋は静寂に包まれ、お互い無言で話しているのも、画面の向こうにいる別の誰かだ。
 元々この部屋は騒がしかった。
 部屋に来たばかりの頃は、未来のことを話して、些細なことで笑い合って。この部屋にはちゃんと二人が存在していた。
 今ここにいるのは、一人と一人だった。

 君が音もなく立ち上がって、部屋を出て行った。
 僕ももうすぐこの部屋を出る。
 静寂に包まれた部屋は、次の誰かがやって来るまで、何も言わずにただ待っている。
 賑やかだったあの頃の思い出だけを連れて、空になった部屋を後にした。


『静寂に包まれた部屋』

9/29/2023, 7:45:39 PM