“私は楽園に生まれた精霊です。”
目の前にふわふわと浮かぶ小さな少女はそう言って深々とお辞儀をした。
ボクは何が何だか分からず、まだ寝ぼけているのかと目を擦ったが、やはり目の前には浮いている少女、精霊が笑ってこちらを見ていた。
“今日から私は貴方の精霊です。-さま。”
聞き取れない言葉に、思わず首を傾げる。ボクの名前を呼んだのだろうか。だとしたら間違っている。
本当に何者なのかと眉をひそめて彼女を見ると、あぁ、と納得したように目を瞑った
“私たちの世界とは名前が違うのでした。_シンさま。よろしければ、私の名前をつけていただけないですか。”
待って、状況がよく分からない。
そう言おうとしたけれど、なぜだか声は出なかった。
なぜか、彼女を知っているような気がして、ボクの口は勝手に動いていた。
“_サキエル...はい。私はサキエルです。”
“これから楽園へ行きましょう。シンさま”
その瞬間、彼女は世界で1番幸せそうな笑顔でそう言って手を掴むと、白い空間へと向かって飛び込んだ。
[楽園]
4/30/2023, 12:06:35 PM