たまき

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#50 好きな本


「好きな本か。考えてみるから、君から教えてくれないか」

「僕は、福田和代の『迎撃せよ』が面白かったよ。いつも図書館でタイトルを見ながら直感で選ぶんだ。これが何故かなかなかアタる」

「ふむ。それなら、僕は人に勧められて読んだものから選ぼう。沢木耕太郎の『深夜特急』が面白かったな。人間味があって、行ったことのない場所なのに 情景が思い浮かぶところなんかね」

「なるほどね。あとは、そうだなぁ。教科書で読んだ、村田喜代子の『耳の塔』が印象的だったなー」

「ちょっと知らないな。どんな内容か教えてくれるかい」

「もううろ覚えなんだけどね、娘だったかなあ。仕事で難聴になった父に付き添って補聴器を買いに行くんだ。でもね階段で置いていかれるかなんかするんだよ。それを読んだ時に、なんかこう…人の寿命や死を意識したんだ」

「興味を引かれる話だね、あやふやなのが残念」

「10年以上前に授業で読んだだけだからねー」

「学生時代に読んだものでいうなら有川浩の『キケン』かな。大学生ならではの行動力と青春に憧れたものだよ」

「ああ、お店の子の話だよね。ゴム銃の改造のくだりが面白かったな。憧れかぁ…それなら村上春樹の『1973年のピンボール』は知ってる?あんなに幸せそうに夢中になれるものを見つけられるって、いいなって思ったんだ」


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ここに出てくる本は、私が読んで面白かったものからいくつか。
あれはここが面白い、こっちは世界観が…と一つに絞れず。
なので、ちょいちょい出てくるけど会うことはなさそうな、情緒のなさに一部定評がある雑学男と、雑学で愛を語ろうとする男の会話で。

6/15/2023, 3:03:10 PM