heart to heart
「心と心」 作 心幸
「頭悪いよね、永遠なんてないものに花束なんて、意味分かんない😀」14歳の真冬は唇を尖らせて、そう嘯いた。そんな、真冬の髪をポンポンと叩くように撫でて祖母の春恵さんは笑った。そうして、春まだ浅い弥生3月の窓から望める小高い山の麓にある墓地を指差した。そして、こう言った「あそこに見える山桜もうすぐ、また今年も満開になる、あの山桜いつ頃から、あの墓を見下ろすように立っているか知ってるかい?」祖母の問いかけに、真冬は「知らないけど、私が生まれた頃にはあったよね」と言った。春恵さんは笑顔でこう答えた、「そうさ、ばあちゃんも知らなかったよ、もう、あそこにこの村の墓地が出来た、頃から有るらしいよ。毎年毎年、春には満開になって、お墓に花吹雪が舞って一面桜の花びらが敷き詰められるのさ、今年も相変わらず、その春が、もうすぐやって来るよ」「それが、どうしたのよ、おばあちゃん、そんなこと当たり前じゃん」真冬が祖母の顔を見つめると春恵さんの目は少し強い光を持ち孫娘真冬の目を見つめた、その優しいけど強い光に真冬は黙って春恵さんの言葉を悪戯心で意地悪く遮ったことを恥ずかしく思い春恵さんの話に耳を傾けた。
春恵さんは、語りはじめた。
「ばあちゃんは、子供だった頃、あのお墓を見下ろす山桜の下に石ころを埋めたことがあってね、何故かって言うとね、ばあちゃんのお父さん、お前さんの曽祖父が戦争に行って白い箱に入って帰った日の夜、ばあちゃんは、その白い箱の中をこっそり覗いたんだよ、そしたらねぇ、小さい小さい石ころが入っていたのさ、なぜだか、ばあちゃんはそれがね無性に悲しくて悔しくて、でもばあちゃんは、悲しくなる理由も悔しくなる理由も、その時は分からなくて、ただ涙が止まらなくてね、そしてまだばあちゃんの父さんが戦争に行く前のお盆に、家族でご先祖様をお見送りに行った帰り道、父さんに手を引かれて聞いた話を思い出したのさ。あの墓場は、かれこれ500年はあの場所にあって、あの山桜は、それより前からあそこにあって毎年毎年桜の花をつけ、ご先祖様の寝ている頭の上を舞い花の絨毯を作るんだ、凄いだろ、父さんもいつかあの墓場に寝る時には酒持って孫連れて参りに来てくれよ、待ってるからな、いつまでもいつまでも…」そんな話をした…。それから少女春恵さんは、石ころをその山桜が一番近くに見える墓地の隅に埋めたそうだ。そして、嫁いで子供が生まれて、その子の手を引いて、山桜の麓の春恵さんの父さんが眠る、お墓に、お酒を持ってお参りに行ったんだ、「父さん、孫連れて来ましたよ」ってね。
「真冬、勘違いしちゃいけないよ、変わらないものが、そこにあるから変わって行けるんだよ、森羅万象変わらないものが諸行無常を見守っているんだよ、荒城の月って詩はねそなことを歌っているんだよ」
春恵さんは続けた、「真冬、なんでお前は真冬って名前か知ってるかい?」「えぇ、大寒の頃に生まれたからでしょ、お母さんが言ってた」「そうだね、曽じいさんの名前知ってるかい?」「知らないよ」「夏生、夏生まれだから夏生なんだよ、いい加減なもんさ、昔は子供が多いからねぇ、名前も適当で、でもその親から貰った名前に意味を持たせるために、父さんは季節の名前を子供たちにつけた。そして、ばあちゃんも娘には季節の名前がつけたくて、お前の母さんに秋穂って名前をつけて、お前の母さんは、お前に真冬って名前をつけた。季節は、何百年何千年同じ様に巡って、真冬は春に繋がりまた花が満開に咲くんだよ、そうして、私たちはその花を眺めて愛で愛しいひとに花束をつくり贈り、酒を飲み移りゆくものの儚さに諸行無常を感じ取るのさ、森羅万象変わらずに有るものが諸行無常を感じ取る心と心を教えてくれるんだよ…お前さんには、まだ難しい話だったかねぇ」春恵さんはそう言って微笑んで、真冬の尖らせた九官鳥みたいな口先に飴玉を突っ込んで、何処かへ消えた。
春浅い午後の日差しが新しい芽が芽吹く仕度に忙しそうにしている姿が春の木立にキラキラと光って見えた。
この話は、フィクションです。
因みに、短編は原稿用紙10枚から文字数で言うと4000字から、この話は短編にもなりませんwww ショート・ショートならいけるのかな?原稿用紙1枚から、そう呼んで良いらしいからwww 「heart to heart」中二なら検索しないでもニュアンスで分かりたい言葉ではあるね、心と心の、この会話も春恵さんは中二の孫でもこの子なら分かると思ったのさ、心と心の会話ってそんなもの、今、分からなくても覚えていて、いつか思い出してくれれば、そう思って春恵さんは話したのかも知れない。孫とばあちゃんの目に見える時間は、そう長くないから。
追記
おばあちゃんの子の孫だったら、それ、おばあちゃんから見て曾孫だわなwww 繋がりの勉強は英語の勉強と同じくらい大事、納得。
おやすみ〜👋🤣
令和7年2月5日
心幸
2/5/2025, 3:44:05 PM