美坂イリス

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「最っ悪…」
天を仰いで、私はそう呟く。そして右手には、ぷすぷすと煙を上げるフライパン。

うん、ちょっと整理しよう。確かに私はゴーヤチャンプルーを作ろうと思ったんだ。それで、昨日の買い物の時にちゃんとにがうりと豆腐、卵は買ってきた。それに、だしの素と醤油も家にあった。

そして、今日の晩ご飯。にがうりのへたとお尻のところを落として、半分に切って。それから、中のわたを大きめのスプーンでがりごり削ったんだ。それを、三ミリぐらいに半月切りにして、ボウルに放り込んで塩でもんだ。それから、フライパンを温めながら卵を溶いて、そこからだ。

豆腐が、なかったんだ。冷蔵庫の中を探してもない、買ってきた時の買い物袋にも入ってない。大慌てで探してたら、いつの間にかフライパンが焦げてたんだ。

「この焦げつき、落ちるかな……」
意外に、高かったのにな。肩を落として、キッチンペーパーである程度焦げを落とす。冷めててよかった。そのごみを、捨てようとしたとき。

「……ほんっとに、最悪だわ……」
ごみ箱の中にあったのは、開封済みの豆腐のパック。それを見て、昨夜の記憶がうっすらと蘇る。

昨夜、ちょっとお酒飲んだんだ。そしたら、何となく何かを口にいれたくなって、冷蔵庫に岩塩があったからそのまま豆腐を……。


うん、自業自得だ。でもな……晩ご飯、どうしよう。

6/7/2023, 4:25:09 AM