文化部の部室にて。
「ねぇカオル、何してるの?」
私は、大きな画用紙を何枚もテープで繋げている大村薫を見て言った。
どうせいつものことだ。バカなことに違いないと、頭では分かっているけれど声を掛けた。
「サヤは知ってた?紙を四十二回折ると、月まで届くらしいぞ」
「はぁ……」
やっぱりか。
大村薫とは幼稚園からの幼馴染で、彼のことを一番よく知っているのは、おそらく私だと思う。そんな私が言うのだから間違いない。
薫はバカだ。
「今日はスーパームーンの日でさ、東南東に綺麗に見えるらしいんだ。だからおそらく、今日が一番の狙い時——」
彼は屈託のない笑顔をこちらに向けて……。
「俺は、月面探索に行っている宇宙飛行士を驚かせる!」
拳を高々と掲げてそう宣言した。
もう私は返事も面倒になって、本を読み始めた。
その日の夜。
雲一つない夜空に、確かに大きく綺麗な月が浮かんでいた。
きっと薫も月を見上げているんだろうな。
「本当……、バカみたい」
そう呟いて、私は窓を閉めた。
お題:君と見上げる月…🌙
9/14/2025, 10:56:42 AM