お題「大空」
ほんとにそれでいいの?
うん!!
私は、小学生になった弟を連れて、デパートに来た。世の中はクリスマス気分で浮ついている。本当はこの時期に買い物には来たくなかった。というのも両親は、弟と私を残して交通事故でなくなってしまった。あの日はちょうどクリスマスの前日で、プレゼントを買いに行った帰りだったらしい。まだ、小学生だった私と赤ん坊だった弟は、世話が掛かると言う理由で親戚間でたらい回しにされていた。いちばん辛かったのは、サンタというものに憧れ、プレゼントが来ないことに悲しみ、密かに泣いている弟を見ることだった。部外者である私たちにまで、プレゼントを用意してくれる人なんておらず、目の前で喜ぶ親戚の子を見て羨ましいと爪を噛むばかりだった。そんな年を重ね続け、私は高校生になった。バイト出来る高校を選び、親戚の援助を貰い通い始めた。来る日も来る日もバイトをしてこの日まで備えた。クリスマスまで
弟にはずっと嘘をついていた。「サンタさんはね、迷子なんだよ。私たちのこと見つけられてないだけ。」と、
もしかしたら、薄々わかっているのかもしてない。だけど、どうせならずっと楽しみにしていたんだから全力で楽しんで欲しかった。だから、私がサンタになることにした。「今回はね、サンタさんが忙しくて来れないからお姉ちゃんが頼まれたんだ」と言った。
そして、現在に至る。本屋まで一直線に走る弟を追いかけて、手芸コーナーに来た。小さな手に握られた分厚めの本には、折り紙の折り方
と書いてあった。
これが欲しいの?
うん!!
おもちゃでもいいんだよ?
これがいい!!
驚いた、、、てっきり、ぬいぐるみとかフィギュアとかそういうのを選ぶと思って財布を重くしてきたのに。まさかのワンコイン。
後で、こっちが良かったと泣かないでくれよと怯えながらも会計をし、帰路に着いた。
なんで、それにしたの?そう聞くと、満面の笑みで答えた。
「サンタさんってね、いっぱいいるんだって!!それでね、僕のサンタさんもいればお姉ちゃんのサンタさんもいるんだよ!!でもね、お姉ちゃんのサンタさんはまだ迷子だからおっきい折り紙でね紙飛行機作って、大空に飛ばして、ここだよってわかるようにするの!」
降り始めたゆきが街灯の光に反射してキラキラと光る。だんだんとぼやけ始める、視界を擦り、顔が熱くなっていくのを感じる。
家の中から聞こえる、子供の甲高く嬉しそうな笑い声がまるで鈴のようで、今まで耳を、目をふさぎたかったこの日が、どうしようもなく愛おしく変わっていくのを感じた。
「そっかぁ、じゃあ来年は私にもサンタさん来るね。ありがとね」
「うん!!」
来年は、ふたつプレゼントを買うことになるなぁ。いつもならきっと、お金の心配だろうけど今はそんなことどうでもいいほど幸せだった。こんな身近にいたんだ私のサンタさん。雪の反射に白くなった大空を見上げ、頬に伝う雫を感じながら、息を吐く。この日を、この大空を決して忘れないように目に刻む。
「私のサンタ」
12/21/2024, 4:09:57 PM