G14

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 雨に打たれながら、一人砂浜を歩く.
 大地を蹴るその足は重い。
 いつもの歩く道なのに、今日ばかりは足を取られる。

 今日僕は背中に背負っていた大切な物を失った。
 失うということは、こんなにも辛いものか。
 この世に生を受けて初めて知った喪失感は、酷く僕の心を蝕む。

 敗者は失い、勝者は得る。
 それはこの世の習い。
 常に奪う側だった僕は、これからもそうだと信じて疑わなかった。
 さっき、奪われるまでは……

 かつて自分は大きなものを背負っていた。
 仲間たちからは羨望の目で見られ、とてもいい気分だった。
 だが今はどうだ。
 僕を心配してくれる奴すらいない。

 結局のところ、僕が背負っていたものしか見えていなかったのだろう。
 価値があるのは僕ではなく、僕が背負っていたものだったのだ。
 みんな僕の事を見ていなかったのだ。

 自分はこれからどうなるのだろう?
 先行きが見えないことに、恐怖を感じる。
 早く背負うものを探さないと。
 でも、そんな都合よくあるわけが……

 おや、僕の高性能な目が、遠くの方でキラリ光るものを捉える
 遠くにあるもの。
 それはいい感じの貝殻。

 全身の血が沸き上がる。
 他のやつに取られる前に、アレを僕の物にしなくては!
 僕は大急ぎで貝殻の元に駆け寄る。

 近くで見ると想像以上にいい貝殻だ。
 これほどの貝殻、他のやつらに取られてはたまらない。
 早く用を済ませよう。

 まずは中を点検。
 うん、変な虫はいない。
 大きさは『前の』よりも少し大きいくらい。
 形も文句なし。

 この貝殻の評価は星五つ、最高だ。
 早速背負ってみよう。
 ここをこうして……
 完成。

 数刻ぶりに感じる背中の重みに、僕は安心感を覚える。
 さっきのまでの不安が嘘のように、僕の心は晴れ渡っている。

 やっぱり貝殻を背負ってなければ様にならない
 だって僕はヤドカリだからね

9/11/2024, 1:32:07 PM