美坂イリス

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夕暮れの帰り道。遠く、潮騒が聴こえる。

「……」
道の向こう、その先の海へと沈む太陽。それを、私は一人眺めていた。
「まあ、しょうがないか……」
今日は、「彼女」はいない。もしかしたら、今日だけでなく、しばらくいないかもしれない。そう考えると、少しだけ憂鬱になる。
「はーやく帰ってこないかなー……」
おどけて、節をつけてそう呟く。そして、大きくため息をついた。

「寂しいな……」



海へと沈む太陽を横目に、わたしは走る。うん、久しぶりに街の鵬に出ると、やっぱり迷子になる。
「て言うかわたしいくつになっても迷子なのか…… 」
『迷子』なんて可愛いもんじゃない。それに、『可愛い』なんてわたしには似合わない。きっと、その言葉はあの子の方がしっくりくる。あの、寂しがり屋さんにこそ。
「ああ、もう帰ったかな……」
走りすぎで脇腹が痛い。けど、それをこらえて、勢いよく漁港の三叉路を走り抜ける。そこに、あの子はいた。

「寂しいな……」

「そんなこと、言ってると思った」
「え、あ、お帰り……」
私は思わず目を擦る。本物……だよね? 大分早いけど。
「あんたが寂しがると思って、早めに帰ってきたのよ。三便ぐらい早いバスで」
「あ、ありが…とう?」
その言葉と一緒に、堰を切ったように涙がこぼれる。そんな私に、彼女はなだめるように少ししゃがんで視線をあわせる。
「泣かないの。ったく、ホントにあんた何歳よ……」
涙を拭いながら、私は考える。
「多分、明日で十四歳かな……」



「そうだね、明日誕生日だったわ」
覚えてる。親戚の誕生日なんて、そうそう忘れるものじゃない。ましてや、それがわたしと二つしか歳の離れてない、大事な姪ならば。

まだ言葉にはするつもりはないけど、あなたがいたから、わたしは頑張れるんだ。妹みたいな、あなたがいるから。

6/20/2023, 10:48:39 AM