ィヨイヨイヨイヨイリンリンリンリリーン

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1年前(キスの位置の意味調べてたら寝れなくなったので書いた)

 たった一年、されど一年。
 瞬く間に時は過ぎ去り、悔いたあの日々がどんどん遠くなっていく。
 ……猟犬として、私が為すべきなんだろうか?

「ハウンド、ハウンド。 敵はいない?」

「……ええ、おりませんよ」

 一年前の貴方は、美しく綺羅びやかなドレスを着て社交パーティーに出かけていた。
 絹糸のような美しい髪、整った目鼻、苦労を知らない指先。
 俺は貴方の側に十年いる騎士で、黒と金の荘厳な鎧を身に纏って何度も凶刃から貴方をお守りしてましたね。
 アフタヌーンティーだというのに、貴方は紅茶に口をつける回数より私をどうにか口説こうとする回数のほうが多かったのはまだ鮮明に覚えております。 貴方が猫のように甘えてきて。 砂糖みたいな日々でした。
 でも、一年前のあの日に全ては燃えカスになりました。
 反乱分子が屋敷に火を放ち、その火に気がついた私は真っ先に貴方を抱えて森へ逃げ出したんでしたっけ。

「お嬢様、怪我の調子は?」

「え? たかがかすり傷よ、貴方が勝手に軟膏も使ったし平気よ」

「……なら良かったです」

「ふふ、ハウンドったらいつまで経っても心配性ね」

 お嬢様が口を隠して笑う仕草に、まだあの時の記憶を想起してしまう。
 だが、あの時とは違う。
 一年前の貴方の体には傷も痣もなく、美しい新雪のような髪は常に整えられていました。
 だというのに、私には貴方を守り切る力が無かったのです。
 腕や背中だけではなく、顔にまで傷を作らせてしまい、ほんのりと傷跡が残ってしまいました。
 見る度に、過去を想起する度に罪悪感で心が苦しくなってしまう。

「そうだ、ハウンド。 森に逃げて来てから、もうじき一年ね」

「っ……申し訳ありません」

「いいのよ、ハウンド。 過ぎたことを悔いても仕方ないし、私は貴方と一緒にいるだけでも幸せなのよ」

 お嬢様は私を手招いた。
 隣に座ると、甘えるように抱きしめられる。
 しばらくそうした後、お嬢様は私の胸当てに軽くキスをした。

6/16/2024, 5:51:57 PM