西の護符屋

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月舟の無き天の川 鳴くカササギ
縮まらぬ距離に 願いの橋かける
明け方の空に 瞬き消えゆ 約束の星

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 幼い頃、織姫の星と彦星の星は本当に少し近づいてみえる天体ショーがあるのかと思っていました。
 そんな事は一切ないと知った大人の今、天体的には何も無いのに、形を変え色んな行事やお話をごちゃ混ぜにしながらも万葉集の昔から百人一首を経て現代まで続く七夕の凄さを改めて思うのです。
 
 昨夜は晴れの熱帯夜。舟にする(日本)には心許ない二日月。天の川が氾濫すればカササギが橋をかけてくれる話(中国)もあるけれど、星がよく見えない我が家からは心許ない瞬きの白鳥座。
 ところで、フィンランドには、死後星となり空で分かたれた愛し合う夫婦が、会うために星屑を集めて光の橋(天の川)を自分達でかけて、やがてシリウスで落ち合う話があるそうな。私はそれが良いな。愛する努力が美しいし、冬の星であるシリウスは今は明け方にしか見えないけれど、強く輝いてくれるから。
 それに、月の舟は8月10日の「伝統的七夕の日」(旧暦の七夕?で毎年国立天文台が定めてる)には丈夫な底の厚さで出港するかもしれないですしね。

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メモ
・フィンランドの話はザカリウス・トペリウスさんの著作、Linnunrata(天の川)から。19世紀の人らしいから、結構新しい。民間伝承が元かとか、本当にアルタイルとベガの話なのかは不明。
・万葉集の七夕の歌を読んで知ったのですが、旧暦の七夕は立秋後のため、七夕も天の川も秋の季語。ついでに朝顔も秋の季語。言うて今でも8月。先の季節を楽しみにするご先祖さん達。
・カササギの渡す橋の話は、七夕の元になった裁縫芸事が巧みになることを乞うて物を供えて祭る(奠)中国の星祭り乞巧奠(きっこうでん)から。天帝の娘織女と牽牛の二星が結婚するも仕事しないから天帝から天の川で引き離されて年一で会うことになる話。実父怖い。
 と思ったら織女の母たる西王母によるパターンもあった。織女の羽衣隠した牽牛が織女と結ばれるも、西王母に織女取り返されたから牛の皮被って天界について行こうとしたら途中で気付かれて、簪で間を引き裂かれたら天の川になったという話。ここでも最後白鵲が一年に一度橋を渡す。実母も怖い。
・日本にカササギ基本居ないからか、東向きの白鳥座概念なかったからか、通い婚時代だったからか、万葉集では月を舟に彦星から乙姫に西へ向かってるのが多数派。彦星が乗った月の状態か月の擬人化か、月人壮士(つきひとおとこ)とも。
・タナバタは棚機という立体的な当時の高級織機とそれを織ることができる渡来人の職人さんを手に入れることが神様にもその役割の人がいる(古事記等)くらい権力の象徴であって、職人が女性の場合タナバタツメというところから、織女と混ざった説が一番腑に落ちた。
・室町時代の「天稚彦草子」による七夕伝説は面白い。古事記の恋愛に溺れ地上平定の仕事を忘れて、催促の神使の雉子を射殺したらその返し矢で逆に殺された美男な神様アメノワカヒコがキャラモチーフ。実は大蛇に擬態していた海龍王で、大蛇に贄にされた娘と結婚する。天に仕事に行った夫を追いかける娘。天若子の父は義娘を認めず害しようとするが生き残り1ヶ月に一度の逢瀬を認め天の川作る。娘聞き間違えて一年に一度になる。義父も怖い。
・七夕に素麺食べるのは星とは関係ない疫病退散のお話から。健康祈願で小1に西瓜贈ったり、七夕の翌日に禊して仕事しようとしたり、知らなかった民間の風習や昔話がどっさりある七夕。単なるメモのつもりがおーわーらーねー。これくらいにしとこう。
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まれの逢瀬に 見る余裕なき願い事
2人の、世界の、自分の、あなたの
幸せを祈る 大合唱する 我等星々

7/7/2024, 11:10:51 PM