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哀愁をそそる

ああ、夢か。
そう思えたのは目に映る幼い時によく見た風景。


すっかり見違えた街
そこはもう私の知っている姿ではなかった。
生い茂っていた木々は取り払われ、代わりに新築マンションや建設中であろう骨組みが立派に聳え立つ。
閑静な住宅街であった場所は、面影の跡形もなく盛況に賑わっていた。
それもそうだ。あれからもう10年も経ったのだから。
当たり前の事実に少し、ほんの少しだけ胸がキュウと締まる。


私だけが知っていた、秘密基地。
会いたかった人達。

何も変わらないあの頃の姿で時間を止めたまま、
思いだけを胸に馳せて。淡い期待も夢の中に溶けていく。
日常のぬるい温かさ、頬を撫でる風の感触はやけに鮮明で。それでいて曖昧で。
そして色褪せて、今の記憶に塗り替わっていく。
混ざって。混じって。


全てが流れるように変わっていく。
周りも。私も。

11/4/2022, 10:54:39 PM