月花

Open App

「鳥のように」


ピピピッ、背後でドアの施錠が解除される音がした。
この後の交代要員の先輩が入って来る。
「どうだ?アルゴスの様子は」
「変わりはないです。いつものように穏やかなものです。」
「そうか」

ここ数年は、毎回同じような会話が交わされるだけだった。

あちらの観測が始まってもうどのくらい経つのだったろうか、それはこちらにとっては、オレが生まれる前からの常識である。

アルゴスというのは、空から観測する言わば観測カメラのようなものだ
鳥のように自由に空を移動して観測をする。

但し、ただの観測カメラではなく、あちらの空に数億もの数を配置し、1機1機が独立したヒトの脳のようなコンピューターが内蔵されたカメラだ。よって、動植物の生息状況、地形や海の中の生態系まで僅かな変化も見逃さないようにされている。

全てのデータは、ミテラに集約、保存され解析される。

あと1年程で、あちらの常駐監視員が配属される事になっている。
勿論、オレは夢を叶える為に志願している。
だが、この事はカノジョにはまだ秘密にしてある。

8/22/2022, 10:29:03 AM