あご下

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夜中に目が覚めた。直前までなにか夢を見ていたはずで、それがあまりいいものでは無かったことくらいは覚えている。天井の輪郭もぼんやりとする中、もう一度眠りたいとは思うものの、尿意と相談をしたいところで、とりあえずはあと何時間寝られるのか知りたい、となればスマホがいる。
メガネもスマホもだいたいは枕の左側、ベッドをピッタリと寄せた壁側に置いている。今日もそこにあるはずだ。数時間前の、眠る直前の自分の思考との推理ゲーム。時々、きちんとサイドテーブルの方に置いているから侮れない。引っ越してすぐは安くてそれなりにお洒落そうなこのベッドを選んだものの、やはりちょっとした小物置きスペースがあるタイプを選んでおくべきだったと、こういう時に実感する。
なかなかスマホの感触が探せない。起き上がる気はなかった。ここで起き上がって、電気をつけて探せばあっという間に見つけられるのはわかっているのに、どうにも意地になって毎度負けられない戦いに身を投じてしまう。愚か。
「スマホー」
「ここだよ」
ひんやりとしたなにかが手のひらを掴んで、ぐっと持ち上げた。そのまま枕の下に突っ込まれると、コツンと固いものに触れた。ケースにもいれていない、私のスマホだ。たしかに、アラームをちゃんと聞きたいときは、なんとなく頭に直接響く気がして枕の下に突っ込む人間なのだ、私は。
私は、一人暮らしだし。スマホを枕の下に潜り込ませた数時間前は、いつも通り一人で眠ろうとしていた。
誰だ、今の声は。
放心しながらもスマホのホーム画面を表示させた。あと三時間で、憂鬱な月曜日がくるらしい。

10/28/2023, 12:54:51 PM