白糸馨月

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お題『放課後』

 ホームルームが終わった瞬間、逃げるように学校から出る。向かう先はゲーセン。
 クラスには一人も友達がいなくて、私は時折陰口を叩かれる側だから居心地が悪すぎて、学校は精神がすり潰される場所だ。
 いつものゲーセンへ行って、ようやく呼吸が出来た気がする。タバコくさいこの場所は皆、私のことなんて見てなくてかえって居心地がいい。
 音ゲーをやって、難しい曲がフルコンボできたので思わずガッツポーズしてしまったら、背後にいたクラスの男子と目が合ってしまった。しかもよりによってカーストトップグループのうちの一人だ。それもこともあろうに女子からモテるイケメンって言われてる奴。
「あ……」
 私の大事な場所まで『学校』に侵食されたくない。
 逃げていったん出直そう。そう思った時、
「待って」
 と腕をつかまれる。びっくりしすぎて思わず体がこわばる。そいつは一方的に話しかけてきた。
「っていうか、佐藤さんってゲームめちゃくちゃ上手いんだね」
 その話し方が親しげなのにもびっくりして思わず目を丸くする。今まで陽キャという生き物からは、私は邪険に扱われたり、バカにされたりしてきたから。
「……なんでここに来たの?」
「あー……あいつらといると疲れるし」
 え、そんなこと思ってたの? そう思うと目の前の男に親しみが湧く。
「君みたいに学校終わった瞬間、逃げることができたらどんなに楽かと思うよ」
「ふぅん」
 モテるこいつでもそうなんだって思う。たしかにあんなバカ騒ぎばかりしてるのを聞かされたり、人を容姿でジャッジしたりする集団の中にいたら頭がおかしくなりそうだ。
「あのさ」
「ん?」
「レベルどれくらい?」
「あー……君よりは弱いと思う」
「私のレベル知ってんの?」
「うん、見えたから」
「じゃ、やりなよ。見ててあげるから」
「うわー、やりづれぇ」
 そう言って、クラスのモテ男が笑う。その後、しばらく二人で交代しながら遊んで、対戦モードをやって、
 ふとした瞬間に『あれ、これが青春ってやつ?』なんて思ってしまったりもした。

10/13/2024, 1:48:33 AM