シシー

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 今だから思う。なんであんなに執着していたんだろうってね。話1つ、趣味の1つも合わない気まずいだけの人を忘れられなかった。

 努力した。無駄な努力をした。
本来の自分とは正反対の性格でおどけてみせて、似合わない服とメイクをして、雑に扱われることに満足していた。
その反動でお酒と睡眠薬がなければやっていけなくなった。鏡に映る姿の醜さに絶望しながら可哀想な自分に酔っていた。

 まあ、長続きなんてするわけもなく、突然飽きられて病んだ私は捨てられた。実際は飽きられたのだけが事実で私が勝手にすべてのつながりを断ったのが正しい。目が覚めたとかならよかったけど単に疲れ果てて続けられなくなったのだ。気持ちは残っていても身体はボロボロで無理だった。

 そんなわけで終わらせようとしたのだ。時間をかけて準備してお気に入りと必需品に囲まれながら眠った。
終わることはできなかったけど、それまでの記憶がごっそり抜け落ちてスマホの中に記録だけが残された。
あんまりにも狂った記録だったから恥ずかしくてほとんど消してしまった。教訓にはなったから無駄ではなかった。

 こんな経験、何度記憶を失っても完全には忘れられないよ。記憶に残らずとも記録があって、記録を消しても身体に染みついた感情は消えない。
あの人やあの人に似た人と会うたびに軽蔑と罪悪感が昔の絶望を思い出させるから。
 どうせ死ぬのならもっと晴れやかな気持ちで死にたい。


       【題:忘れたくても忘れられない】

10/17/2024, 10:33:16 AM