人は皆、私を不運だと哀れみの目で見るけれど、私は決してそうは思わない。
なぜなら、私は九死に一生を得る経験を何度も何度もしているからだ。
物心がつく頃から『これは死ぬ』と思う瞬間が度々あった。けれどその度に無事生還してきた。
これを奇跡的な幸運と呼ばず、なんと呼べばいい?
そう、繰り返し繰り返し死の淵に立たされてきた。
だから今回も死に直面しながらも、なんやかんやで助かるのだろうと確信があった。
それなのに、今回ばかりはそうではなかった。
私はこれまで、幸運を撚り合わせて作られた奇跡という名のロープに掴まることで、死の淵から救い上げられてきたようなものだ。
それがここにきて、撚り合わせられている繊維がぷつりぷつりと千切れていく感覚を覚える。
奇跡よ、もう一度起こってくれ──!
必死の祈りも虚しく、全ての繊維が解れた手応えがして、呆気なく死の淵に沈められた。
テーマ【奇跡をもう一度】
10/3/2022, 11:23:08 AM