未知亜

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ㅤ仕事をやめても、相変わらず眠れなかった。
ㅤ諦めて散歩に出ると、帰りには登校途中の小学生とすれ違う。徒歩の人もいれば自転車の人もいる。ひとりもいれば複数の人も。校帽や制服の違いから、近隣には小中高合わせて五つくらいの学校があると知れた。そんなことも、知らなかった。
ㅤ前から来る小学生の青いパーカーに「帰りたい」と書いてある。白い文字がなんだか情けなく訴えていた。
ㅤ彼は給食袋らしき巾着をぶら下げ、ほてほてと信号を渡って校門の奥へ吸い込まれていく。門の脇に、垂れ幕があった。
「夢へ!」
ㅤ登校前から帰りたいと書かれた服を選んでしまう彼の夢が、果たされますようにと願いながら帰宅の途に着いた。



『夢へ!』

4/11/2025, 12:20:02 AM