300字小説
貴女が願ったから
『この地を荒れたままで終わらせないで。お願い、元の緑豊かな地に戻してちょうだい』
そう貴女が願ったから、私は今日も鍬を手に荒れ果てた地と向かい合う。
井戸を掘り、水路を作る。水を引き、枯木の切株を掘り起こし、土をすく。
さあ、何を撒き、何を植えようか。
先ずは貴女の好きだった花が良い。
禁忌の魔法により川は枯れ、緑が枯死したという地を訪れる。
そこに広がっていたのは、以前よりも更に豊かになったという農地と森、水を湛えた灌漑用の溜池と水路だった。
「この地を訪れた魔法使いの下僕が、この地をよみがえらせてくれたのです」
村外れの墓地に向かう。魔法使いの墓の前に動きを止めたゴーレムが花に埋もれて、たたずんでいた。
お題「終わらせないで」
11/28/2023, 11:37:43 AM