百瀬御蔭

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 棺桶の扉が開かれ、遺族と参列者が周りを囲む。雪見は花が詰められた籠を持って彼らの元へ歩く。

「別れ花を添えた後は釘打ちの後、火葬が行われます。故人様にお別れを伝えることが出来る最後のお時間です」

 喪主である老婦人はすすり泣き、ハンカチで拭う。彼女は雪見の方を向き、合図を送る。

「喪主の巴様から、ご遺族様、参列者の皆さまの順で配ります。手向ける際には故人様のお顔が隠れないよう、ご協力をお願いいたします」

 白菊、白百合と白い花が目立つ。孫たちが折った折り鶴や舟など紙細工も手元に添えられる。籠いっぱいの花は二周したところで全て納められ、最後は、色とりどりのガーベラの花束を以て棺は固く閉ざされた。

「……また会いましょう、忠信さん」

『結び目は喉仏となり』
お題
永遠の花束

2/5/2025, 9:57:07 AM