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『まだ知らない君』

差出人のない手紙を受け取って、君はさぞかし気味悪く感じていることだろう。
だけど、破り捨てるのはちょっと待ってほしい。
これから私が語るのは、君の将来に大きく関わることだから。

まずこれを書いている私は、未来の君である。
信じられないのも無理はない。私だっていきなりこんな手紙を受け取ったら、今の君と同じ反応をするだろう。

だから……そうだな、私が未来の君であることの証明に、明日君に何が起こるか書こうと思う。
この手紙を破くなり燃やすなりするのは、それを確認してからでも遅くはあるまい。

明日、君は通学途中に衰弱しきった猫に出会う。
なんとなく見過ごせなかった君は学校へ連れていき、保健室の養護教諭と共にその猫の世話をするだろう。
下校時にはその猫を抱いて、ある橋のたもとを通りかかる。

その時聞こえる声に、返事をしてはいけない。
できるなら、そこを通らないでほしい。

でも、きっと君は私の忠告には耳を貸さないだろうから、声をかけられる前提で話を進めよう。
不思議な声に驚いた君は、思わず相手に問いかけてしまう。
――お前は誰だ、と。

大丈夫、まだ最悪の事態には陥っていない。
その後のやり取りで危ういところはあるが、君はなんとか家へ帰れるだろう。
それから先のことは、その時また君へと届く私からの手紙を読めばいい。

まだ何も知らない君へ。
君の未来が少しでも明るいものになるように、私はこれを送る。

1/31/2025, 5:09:45 AM