壊れた月の残骸が、今も路傍に転がっている
物言わぬ岩はやがて忘れられて
冴え渡る白銀は初めから存在しなかった
蜃気楼のように
旅人の心にのみ焼き付いて、終焉まで連れ添うのか
鏡の向こうから
淀んだ眼差しが絡み付いて、寝怖る耳に垂らす災禍
繰り返し責める、まるで波長の合わない声
お前は誰だ
そう叫ぶ時だけは親友になれた
奇怪な足取りで探る息遣い
空になった肺を毒で満たして
剥き出しの頭で粗末な穢れを炙り出しては
自己満足に酔い痴れて
駄菓子のように脆い言葉で、爛れた愛を包んで贈る
臓腑も骨も弾丸に、膿んだ口元から吐き出す日々
もう懲り懲りだ
飽き飽きだ
草臥れた霊をぶら下げて
だから私は戸を叩いた
崩れる体で登る大輪を見つめる
足が落ち、もう立ち上がることは叶わない
澄んだ空気は罪を糾さず、されど沈黙もせず
風に紛れて詩を紡いだ
腕が落ち、胴が落ち、それでも空は果てしなく
純白の綿は贖いを求めず、空を滑り肥えていく
慰めでもなく、咎めるでもなく
等しく降る涙を蓄えて、山を越えて咲くまでは
残る頭は一句も残さず
石に揉まれて砂になって
微かな残り香だけを預けて眠る
白鳥だけが全て見つめていた
(夜が明けた。)
4/28/2025, 11:34:26 AM