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お題「流れ星に願いを」

流れ星に願掛けしよう

あなたはそう言って、既に何かをなし遂げた様な顔で望遠鏡を担いできた。

真冬の夜の澄んだ空気の、瞬く星の銀河の下。

大きな手袋をつけたまま、慣れない手つきで望遠鏡を組み立てようとしているあなたを、私はじっと後ろから眺めた。

どこから引っ張り出したのか、月でも撃ち落とすんじゃないかという程大きなそれは、今の私達には明らかに不釣り合いなものだった。

手袋を放り出して望遠鏡を完成させたあなたは、かじかむ指もそのままに、飛びつく様にレンズを覗き込む。

流れ星を探すのに、望遠鏡はいらないんじゃ

思ったけれど、口には出さない。
そっちの方が、一生懸命、夜空に心を奪われているあなたを、見ている事ができるから。

不意にあなたが振り向いて、私は少し、ドキッとした。

ほら、きて

あなたが急かすように場所を空けた、レンズの先にあったのは、なんて事ない普通の土星。

知ってる? 土星の輪って、ものすごく薄っぺらいらしいよ

私はレンズから顔を離し、どうでもいいというふうに、呆れながらそこから離れる。
あなたはそれを気にするでもなく、再びレンズの虜になると、すぐにあなたの心は、また澄んだ夜空に還っていく。

ごめんね

あなたがこんなにも流れ星を探しているのに、私の心は、流れ星なんか来なくていいと思ってしまう。
あなたはこんなにも夢中に、夜空に願いを飛ばしているのに、私の願いはあなたの側にいるだけで、既に叶ってしまっている。

少し後ろめたくなって、特別心惹かれるでもない空に、顔を向けた。

南の空に並んだ2つの星は、私達の事など気にもせず、いつもと変わらずに瞬いている。

不意にその間に、一筋の光が流れた。

あ、流れ星

えっ

レンズを覗き込んでいたあなたは、飛び跳ねる様に、私を見た。

どこ?

もう消えたよ

頭を抱えて落ち込むあなたの姿を見て

案外、普通にしていた方が、見つかる事もあるんだな

と、思った。

そう言えば、あなたは流れ星に、何をお願いするんだろうか?

4/26/2026, 7:08:20 AM