・神様が舞い降りてきて、こう言った。
「それ、私は好きだよ」
くしゃくしゃに丸めた画用紙を指さして君は言う。
僕にとってこれはたった今ゴミになったのに。
それでも君はこのゴミを好きだと言った。
「勿体ないし、せっかくだから貰っていい?」
くしゃくしゃの画用紙を広げながら聞いてきた君に、僕はしどろもどろになりながら静かに頷く。
彼女は僕の返事を聞くと嬉しそうに飛び跳ね、そのまま画用紙をカバンの中に丁寧にしまい込んだ。
「貴方の絵、とっても好きなんだ」
「えっ……ど、どこが?線は歪んでるし色彩のバランスも悪いのに」
「そういうのよく分からないや!単に貴方の絵が好きなだけだよ」
はじめてだった。
技術じゃなくて、僕の書いた絵そのものを好きだと言ってくれる人が。
それが彼女にとってなんて事ない言葉だったのかもしれない。それでも僕にとっては救いの言葉のように思えた。
なんだか少しだけ心が晴れやかになった気がして、思わず笑みがこぼれる。
そんな僕の様子を彼女は不思議そうに見つめていた。
7/28/2024, 9:12:17 AM