とある恋人たちの日常。

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「無理、しないでくださいね」
 
 優しく耳元で囁かれるいとしい人の優しい声。
 眠りの海から浮かびかけていた俺が目を覚ますのには十分な甘い言葉だった。
 
 目を覚ますと、覗き込んでいた彼女と目が合う。俺が目を覚ましたことに彼女は驚いて目をぱちくりさせていた。
 
「おはようございます」
「ん……おはよ」
 
 身体を起こす前に彼女に手を伸ばす。彼女に触れてから、抱き寄せてベッドにまた転がった。
 
「うわっ!!」
 
 彼女を抱き潰して、恋人の体温、香りを堪能する。彼女の温もりを覚え、彼女が手元からなくなって時間が経っていた事を理解させた。
 
「結構離れてた?」
「朝ごはん作ってました。もうできましたよ」
「そんなに寝入ってたんだ」
 
 眠る時に彼女から離れると不安になる。肌を重ねてからすぐにそれがあると思い知り、それ以降は彼女を抱き枕にさせてもらっていた。
 
 それなのに、こんな離れていたことに気が付かないほど寝入っていたのは正直不覚だ。
 
「ごはん……食べない?」
 
 腕の中であどけなさを残して首を傾げる彼女。こんな可愛い顔をされたら、食べないなんて選択肢、生まれるはずないよ。
 
 もう少し彼女の温もりを堪能したかったけれど、俺は身体を起こすことに決めた。
 
「……食べる」
「良かったぁ」
 
 ああ、ずるい。
 
 ほっとした笑顔に愛しさを感じて、彼女の額に唇を乗せると、彼女も俺の身体をぎゅーっと抱きしめてくれた。
 
「起きようか」
「はい! 朝ごはん、しっかり食べてくださいね」
 
 うん。
 ご飯を食べた後に彼女の温もりを堪能させてもらおう。
 
 そんなことを考えながら、彼女を解放し、ふたり揃ってダイニングに向かった。
 
 
 
おわり
 
 
 
三四一、big love!

4/22/2025, 1:20:03 PM