『プレゼント』
クリスマスの朝はまず、プレゼントを探すところから始まった。
うちのサンタはなぜだかエンタメ性が高く、プレゼントの届く場所はその年ごとに違っていて、いつもなら眠くてなかなか起きない私も、その日だけはパチッと目を覚まして家中を探し回った。
両親の寝室に父の書斎、物置部屋やリビングの窓の側……ここはさすがにないだろうと分かっていながらも、トイレのドアまで開けたりしてみたものだ。
プレゼントをもらうのと同じくらい、プレゼントを探すことも私にとって大事なクリスマスの楽しみだった。
大きくなると、サンタは私の元に来なくなった。
大人になった今、誰かに形ばかりのプレゼントをもらうことはあっても、プレゼントを探す楽しみだけは味わうことができない。
そもそも、独り暮らしの家の中にプレゼントが置かれていたらいたで、クリスマスの朝から恐ろしい気分になるに違いないのだ。
クリスマス当日。心なしか部屋にはクリスマスの朝のあの空気が流れていて、私は朝からちょっぴり寂しい気持ちになった。
そうは言っても、クリスマス休暇などないうちの会社にとって今日はただの平日なので、そろそろ出勤の用意を始めなくてはいけない。
体温で温まっている布団に後ろ髪を引かれながらも、上着を一枚羽織った私は、意を決して布団から立ち上がった。
支度を終えた私は、冷たい風が吹き込むことを覚悟して、首をすぼめながら玄関の扉を開けた。
すると、玄関を出てすぐの場所に心当たりのない荷物が届いていた。
不思議に思って宛名を確認すると、そこには確かに私の名前が書かれていたが、差出人の名前は見当たらない。
だが、私はその癖のある手書きの文字に心当たりがあった。
私は一旦部屋に戻り、玄関でその包みを開ける。
ちゃんとラッピングが施された袋の中身は、上品であったかそうなチェックのマフラーだった。
それと一緒にメッセージカードも入っている。
『メリークリスマス。寒いので風邪をひかないように。』
やはりよく見慣れたその文字は、かつてうちに来ていたサンタの字と同じだ。
久しぶりにプレゼントを持って来たかと思ったら、家の中じゃなくて玄関先に置いていくなんて、我が家のサンタはどれだけ変わったサンタなんだ。あの頃の私でも、さすがにそこにあるとは気づかないのではないだろうか。
私はそう思いながらも笑みをこぼす。
久しぶりにプレゼントを見つけた時のあのワクワクした感覚が蘇り、朝起きた時に感じた寂しさはいつの間にか消えていた。
サンタにあとでちゃんとお礼を伝えないと。
届いたばかりのマフラーを首に巻いた私は、早足で仕事へ向かった。
12/23/2023, 5:46:46 PM