「あいつは妹みたいなやつなんだよ」
彼はそう言っていた。茉莉というその女友達も、彼のことをお兄ちゃんみたいな存在だと言った。
きっと嘘ではないのだろうと思った。少なくとも彼は本当にそう思っているようだった。だから私は、もやもやした気持ちを一旦心の奥に閉じ込めることにした。
2人が気に入っているという喫茶店で、3人でのんびりお話をした。彼の他の友達と同じように接することを常に意識しながら。茉莉も、少し素っ気ない気はしたけど、恋人を紹介されたただの友達のような態度で接してくれていた。
1ヵ月後に迫るバレンタインの話になったとき、茉莉が「彼女さんが妬いちゃうなら、お兄ちゃんにはお菓子あげない方がいい?」と聞いてきた。私に聞いたと言うよりは彼に聞いたような言い方だったが、私が先に「気にしないでいいよ」と答えてしまった。貰える方が嬉しいけど私の気持ちも大事にしたいという対立からか、彼もすぐには答えづらかったように見えた。茉莉は無邪気に喜んでいたし、彼もホッとしたようだった。あぁ、これが正解だ。と私も安心した。
本当は全部、嫌だった。私以外の女の子からお菓子を、特に茉莉から貰うのも、茉莉の聞いてくるタイミングと聞き方の巧妙さも、おふざけのようにしつつも強調するためのあえてのお兄ちゃん呼びも、何も気にならない彼の鈍感さも。
でも私は、これで良いと思った。私は誰からも嫌われないで済むし、彼は幸せだし。これで良いのだと自分に言い聞かせた。
#何でもないフリ
12/11/2024, 6:34:06 PM